東京地方裁判所 昭和43年(行ウ)202号 判決 1978年8月24日
原告 坂田康子
被告 武蔵野税務署長
主文
一 原告の各請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の申立
(原告)
一 被告が、昭和四二年三月三日付でした原告の昭和三八年分ないし昭和四〇年分の所得税更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税決定処分(いずれも裁決により一部取り消された後のもの)を取消す。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
(被告)
主文と同旨
第二原告の請求原因及びこれに対する被告の認否
(請求原因)
一 原告は、久留米町において有限会社パリー美容院の代表取締役として右会社を経営するかたわら、不動産仲介、アパート経営等を営む者であるが、昭和三八年ないし昭和四〇年分の所得税について別表一記載のとおり各確定申告をしたところ、それに対して同表記載の経緯でそれぞれ更正(いずれも裁決による一部取消後のもの。以下「本件各更正」という。)並びに過少申告加算税及び重加算税の賦課決定(以下「本件各賦課決定」という。)を受け、これに対する行政不服申立手続を経由した。
二 しかしながら、本件各係争年分における所得が原告に帰属することは認めるが、右各年分の所得を原告名義で申告したのは被告所部の担当官長松某及び小原某から強要されたためであり、しかも本件各更正は、原告の所得を過大に認定したものであるから違法であり、かつ、これを前提としてなされた本件各賦課決定も違法である。
よつて、原告は本件各更正及び各賦課決定の取消しを求める。
(請求原因に対する被告の認否)
一 請求原因一の事実は認める。
二 同二のうち、本件各係争年分の所得が原告に帰属することは認めるが、その余の点は争う。
第三被告の主張
各係争年分の所得金額及びその算出根拠並びに加算税賦課決定の根拠は以下のとおりである。
(昭和三八年分)
一 所得の内訳は次のとおりである。
(単位 円)
所得区分
更正額
(裁決による一部取消後のもの)
被告主張額
備考
総所得金額
一一、五八七、九八六
一三、八八四、六二六
内訳
不動産所得
一、七二五、四三七
一、七二五、四三七
争いなし
事業所得
九、六七〇、五四九
一一、九六七、一八九
給与所得
一九二、〇〇〇
一九二、〇〇〇
争いなし
二 事業所得金額の内訳は次のとおりである。
(単位 円)
科目
被告主張額
備考
収入金額
三九、九七五、二六六
内訳
売上高
三六、四一四、七六〇
受取仲介手数料
三、五六〇、五〇六
売上原価
二一、三九三、七五〇
争いなし
売上利益
一八、五八一、五一六
必要経費
六、六一四、三二七
内訳
旅費通信費
二五七、五六七
右以外の必要経費
六、三五六、七六〇
争いなし
差引所得
一一、九六七、一八九
三 事業所得金額の明細は以下のとおりである。
1 売上高
(単位 円)
符号
売上先
土地の所在地
坪数
被告主張額
証拠等
(1)
中井寿美子
東村山市秋津四丁目
四〇・〇〇
四四〇、〇〇〇
争いなし
(2)
深江俊郎
同右
六〇・〇〇
六六〇、〇〇〇
同右
(3)
佐野康典
同右
五〇・六六
五〇六、六〇〇
同右
(4)
山下靖生
同右
四九・一五
八八四、七〇〇
乙第三八号証
(5)
塩沢春茂
同右
四二・〇〇
七五六、〇〇〇
乙第三七号証
(6)
深谷一雄
同右
四二・〇〇
六七二、〇〇〇
乙第一号証
(7)
鈴木勇
同右
四六・三五
八三九、三〇〇
乙第二号証及び三五号証
(8)
内山久子
同右
六〇・〇〇
六六〇、〇〇〇
争いなし
(9)
荒木節夫
同右
五五・一七
一、一〇二、四〇〇
乙第三号証の一ないし五及び三九号証
(10)
荒木敏子
同右
四五・〇〇
五四〇、〇〇〇
争いなし
(11)
本田喜代治
同右
五〇・〇〇
五五〇、〇〇〇
同右
(12)
山田久代
同右
三六・〇〇
四三二、〇〇〇
同右
(13)
同右
同右
一〇・二〇
一二二、〇〇〇
同右
(14)
綾部利政
同右
三一・四七
三七七、六四〇
同右
(15)
中野愛子
同右
四九・一九
六三九、四七〇
同右
(16)
熊谷毅
同右
二八・三四
三九六、六八〇
乙第四号証
(17)
志田淳男
同右
九八・五〇
九八五、〇〇〇
争いなし
(18)
免取英雄
同右
九八・八四
一、九五〇、〇〇〇
乙第五号証
(19)
高橋忠弥
同右
一四六・一二
一、七五〇、〇〇〇
争いなし
(20)
竹村竹一
同右
四二・〇〇
九〇〇、〇〇〇
乙第六号証及び四〇号証
(21)
薄井武司
同右
四九・一二
八二〇、〇〇〇
乙第七号証
(22)
小池昭一
同右
四二・三〇
七五六、〇〇〇
乙第三六号証
(23)
小沢幸麿
同秋津三丁目
一七〇・〇〇
一、七〇〇、〇〇〇
争いなし
(24)
藤木弘
同右
三七・六六
四五一、九二〇
乙第四号証
(25)
岡田徳太郎
同右
二四・八〇
二九八、六八〇
争いなし
(26)
宮村良蔵
久留米町南沢
一二七・〇〇
一、八四一、五〇〇
同右
(27)
不明
清瀬町下里中原
五九・一六
六五九、五六〇
同右
(28)
松原祐吉
東村山市野口向台
六〇・〇三
二、二八〇、〇〇〇
同右
(29)
館野文男
同右
三六・四一
一、四九二、八一〇
乙第八号証
(30)
渋谷食品
同右
六四・一一
二、六八八、〇〇〇
争いなし
(31)
菊地
久留米町小山本宿
八〇・〇〇
一、六〇〇、〇〇〇
同右
(32)
日ノ出不動産
東村山市諏訪町
二六六・五一
六、六六二、五〇〇
同右
計
三六、四一四、七六〇
2 受取仲介手数料
(単位 円)
契約月日
売主
買主
被告主張額
証拠等
38・1・25
土屋方雄外
福和商事
二、〇〇〇、〇〇〇
乙第二一号証及び五〇号証
3・8
不明
東京コンクリート
五七二、七〇六
乙第二〇号証の一、二
峯岸寅松 外五件
九八七、八〇〇
争いなし
計
三、五六〇、五〇六
(一) 福和商事分
右福和商事は福和商事株式会社の前身というべきもので、西村信夫の父西村八郎及び遠藤正経が営んでいた不動産業の屋号である。右福和商事は昭和三八年一月ころ東久留米市神宝町一丁目(旧地名神山字向台)一番地から七番地の農地約三千坪をその所有者であつた土屋方雄外六名から買受けた。その際地主等から信頼があつた原告が右取引の仲介をしたものであり、その仲介に対して福和商事が原告に対して仲介手数料として二、〇〇〇、〇〇〇円を支払つたものである。
(二) 東京コンクリート分
原告は、東京コンクリート株式会社の工場用地買収にあたりその取引を仲介し、東京コンクリート株式会社より仲介手数料として五七二、七〇六円を全額領収している。
3 売上原価
(単位 円)
区分
所在地
被告主張額
証拠等
<1>期首棚卸高
東村山市野口向台
外一二件の土地
二六、八八三、六三〇
<2>仕入高
新座町片山北原
外二件の土地
一二、七一三、〇五〇
<3>期末棚卸高
新座町片山北原
外一〇件の土地
一八、二〇二、九三〇
争いなし
売上原価
<1>+<2>-<3>
二一、三九三、七五〇
4 必要経費(旅費通信費)
原告は、夫坂田義一が東南アジアに旅行した費用は事業の遂行上のものであるから必要経費となると主張するが、もつぱら小規模な土地分譲や土地売買の仲介を業とする原告の場合にあつては、国内旅行ならともかく、経済的後進国で土地の事情も相違する東南アジアに旅行することは常識的に考えても事業に関連するところがなく、右の旅行は単に個人的見聞を広めるためのものにすぎないと思われる。また、旅費通信費が事業所得の金額の計算上必要経費と認められるためには、その支出時期、支出先、目的、金額等が明らかにされ、事業との関連性が客観的に証明されなければならないが、原告はただ必要経費となると主張するのみで具体的な説明を原処分の調査時以降明らかにしておらず、とうてい必要経費として認められるものではない。
(昭和三九年分)
一 所得の内訳は次のとおりである。
(単位 円)
所得区分
更正額(裁決による一部取消後のもの)
被告主張額
備考
総所得金額
一四、六七八、二八五
一六、三三八、二九〇
内訳
不動産所得
一、七三七、六二六
一、七三七、六二六
争いなし
事業所得
一二、六七四、六五九
一四、三三四、六六四
給与所得
二六六、〇〇〇
二六六、〇〇〇
争いなし
二 事業所得金額の内訳は次のとおりである。
(単位 円)
科目
被告主張額
備考
収入金額
三三、二〇五、二一五
内
訳
売上高
二五、一九三、九三〇
受取仲介手数料
八、〇一一、二八五
売上原価
一二、〇五三、二〇〇
売上利益
二一、一五二、〇一五
必要経費
六、八一七、三五一
内
訳
接待交際費
七五八、一三八
右以外の必要経費
六、〇五九、二一三
争いなし
差引所得
一四、三三四、六六四
三 事業所得金額の明細は以下のとおりである。
1 売上高
(単位 円)
符号
売上先
所在地
坪数
被告主張額
証拠等
(1)
新藤千恵
東村山市秋津町四丁目
六七・〇〇
八〇四、〇〇〇
乙第二七号証、四八号証及び四九号証
(2)
真島栄
同右
五〇・〇〇
六五〇、〇〇〇
甲第一〇号証の一
(3)
広瀬裕
同 秋津三丁目
三六・三七
五四五、五五〇
争いなし
(4)
伊藤賀明
東村山市南秋津
八九・六四
一、七九二、〇〇〇
同右
(5)
秋山不動産
同右
九二・五八
一、八五一、六〇〇
同右
(6)
気賀沢昭三
久留米町神山堂坂
一〇七・七三
三、二三一、九〇〇
同右
(7)
小山幸隆
所沢市狭山丘
四五〇・〇〇
二、九二五、〇〇〇
同右
(8)
川島安久
同右
二七三・六三
一、九一五、二〇〇
同右
(9)
岡部秀夫
東村山市南秋津
五八・二七
一、二八一、九四〇
同右
(10)
臼井昭志
同右
三八・五七
九六四、二五〇
(11)
肥沼豊
同右
五一・五一
一、一〇〇、〇〇〇
乙第九号証
(12)
本田博
同右
六〇・四五
一、五六〇、〇〇〇
乙第四一号証及び四二号証の一、二
(13)
小堀澄子
同右
三五・三四
八八三、五〇〇
乙第二五号証、四三号証及び四四号証の一、二
(14)
鈴木常弘
同右
四一・二六
一、〇三一、五〇〇
乙第一〇号証
(15)
市村つねよ
同右
三一・七四
五七一、三二〇
争いなし
(16)
羽賀新次郎
同右
三六・一九
六五一、四二〇
同右
(17)
田中一就
同右
六六・八〇
一、六七〇、〇〇〇
乙第一号証
(18)
黒田道雄
同右
三五・三一
八八二、七五〇
乙第一一号証
(19)
仁木功
同右
三五・二八
八八二、〇〇〇
乙第一二号証
計
二五、一九三、九三〇
(一) 新藤千恵分
原告は本訴においていつたん被告主張額を認めながら、土地の測量誤りがあつたとして譲渡金額を六一六、〇〇〇円と訂正して主張する。しかし登記簿によると新藤千恵が取得後一年以上経て分筆した上、隣家の薄井武司等に昭和四〇年の七月頃原告等の仲介によつて、転売していることが明らかであり、原告主張の坪数は分筆後のそれであつて測量を誤つた事実はない。
(二) 臼井昭志分
臼井昭志に対しては少なくとも坪当り単価二五、〇〇〇円、総額九六四、二五〇円で譲渡されたものである。
右認定額の妥当なことは、同時期に原告が分譲した隣接地の坪当り単価が本田博分二六、〇〇〇円、小堀澄子分二五、〇〇〇円、鈴木常弘分二五、〇〇〇円、黒田道雄分二五、〇〇〇円、仁木功分二五、〇〇〇円であつたことからも明らかである。
2 受取仲介手数料
(単位 円)
契約年月日
売主
買主
被告主張額
証拠等
39・2・29
不明
丸善建設
六、七五四、〇〇〇
乙第二二号証
名島タカ 外二四件
一、二五七、二八五
争いなし
計
八、〇一一、二八五
丸善建設(株)分
原告は、久留米町門前落合の農地三、〇〇〇坪の取引を仲介し丸善建設(株)より昭和三九年中に前後二回にわたつて六、七五四、〇〇〇円を受領している。
3 売上原価
(単位 円)
区分
所在地
被告主張額
証拠等
<1>期首棚卸高
昭和三八年分期末棚卸高に同じ
(明細は別表二イ欄のとおり)
争いなし
<2>仕入先
東村山市秋津四丁目
(仕入先松村モヨ子 七六〇坪)
九、一二〇、〇〇〇
甲第三六号証の一
埼玉県志木町
(仕入先中武土地(株) 一〇〇坪)
二、五〇〇、〇〇〇
争いなし
計
一一、六二〇、〇〇〇
<3>期末棚卸高
東村山市秋津の土地
三、六七八、三六〇
新座町片山北原
外七件の土地
一四、〇九一、三七〇
争いなし
計
一七、七六九、七三〇
明細は別表二ニ欄のとおり
売上原価
<1>+<2>-<3>
一二、〇五三、二〇〇
(一) 東村山町南秋津中沢地域の昭和三九年期末棚卸高の計算根拠は次のとおりである。
すなわち、同地域の同三九年一月一日現在の期首棚卸面積は一九〇・六二坪(別表二イ欄11番参照)で、同年中の仕入は七六〇坪(別表二ロ欄12番「松村モヨ子」分)であり、同年中における同地域の土地の売上坪数は一四件合計六四四・〇九坪である(別表二ハ欄11、12番)。従つて、右期首棚卸面積一九〇・六二坪と右仕入面積七六〇坪の合計九五〇・六二坪から右売上面積六四四・〇九坪を差し引いた三〇六・五三坪が同三九年一二月三一日現在の期末棚卸面積(すなわち、同四〇年一月一日現在の期首棚卸面積)となる。
(二) 被告は、右南秋津中沢地域の右昭和三九年一二月三一日現在の期末棚卸面積三〇六・五三坪の土地の評価をするに当たり<1>右土地は、いずれも同一造成地域内にあつて、原処分の調査の際取引についての記帳が十分でなく、かつ、原告から売買契約書等の提示がなかつたことから明確に区分できなかつたこと、<2>原告は資金繰りの関係上仕入れた土地は早期に売却していたこと、及び<3>原告の昭和四〇年分の青色申告書提出承認申請書(なお、昭和四二年三月三日付けで原告の青色申告承認は取消されている。)によると棚卸資産の評価方法として最終仕入原価法を採用していたことなど総合的にみて、右三〇六・五三坪の単価として同地域で同年中に仕入れた松村モヨ子分の仕入単価一二、〇〇〇円を採用し、同年期末棚卸高を三〇六・五三坪に右単価一二、〇〇〇円を乗じて三、六七八、三六〇円と算定したものである。
4 必要経費(接待交際費)
接待交際費が事業所得の金額の計算上必要経費と認められるためには、その支出時期、支出先、目的、金額等が明らかにされ、事業との関連性が客観的に証明されなければならないが、原告はただ必要経費となると主張するのみで具体的な説明を原処分の調査時以降明らかにしておらず、とうてい必要経費として認められるものではない。
(昭和四〇年分)
一 所得の内訳は次のとおりである。
(単位 円)
所得区分
更正額(裁決による一部取消後のもの)
被告主張額
備考
総所得金額
六、四九三、七八一
七、八五四、三八六
内訳
不動産所得
一、二〇六、一四七
一、二〇六、一四七
争いなし
事業所得
五、二八七、六三四
六、六四八、二三九
二 事業所得金額の内訳は次のとおりである。
(単位 円)
科目
被告主張額
収入金額
四三、二九五、二七〇
内訳
売上高
四二、四〇五、五二〇
受取仲介手数料
八八九、七五〇
売上原価
二八、五一四、二四〇
売上利益
一四、七八一、〇三〇
必要経費
八、三四二、七九一
雑収入
二一〇、〇〇〇
差引所得
六、六四八、二三九
三 事業所得金額の明細は以下のとおりである。
1 売上高
(単位 円)
符号
売上先
所在地
坪数
被告主張額
証拠等
(1)
関八重子
久留米町南沢北原
一〇〇・〇〇
四、六〇〇、〇〇〇
争いなし
(2)
北林幸太郎
同右
五四・九七
二、五二八、六二〇
同右
(3)
石山羊司
同右
六〇・三六
二、七七六、五六〇
同右
(4)
山崎浩
同右
四〇・四八
二、四二九、四〇〇
乙第一三号証の一、二及び一四号証
(5)
山田実
同右
九五・〇〇
五、九八五、〇〇〇
乙第一五号証の一ないし三
(6)
小沼治夫
同右
三二・五六
一、四九七、七六〇
争いなし
(7)
渡辺久幸
新座町片山北原
四〇・〇〇
九六八、〇〇〇
同右
(8)
篠木隆三
同右
四〇・〇〇
八八〇、〇〇〇
同右
(9)
丸善建設
同右
三六二・〇〇
九、四一二、〇〇〇
同右
(10)
岩渕文男
東村山市秋津四丁目
三五・〇一
一、〇一五、二九〇
乙第四六号証
(11)
服部昭吉
同右
四九・一二
一、四七〇、〇〇〇
乙第一六号証
(12)
浜勝子
同右
八三・〇一
二、〇〇〇、〇〇〇
乙第二九号証
(13)
三野栄治
同右
六九・〇〇
二、〇〇一、〇〇〇
乙第一七号証及び四五号証
(14)
神座康夫
東村山市南秋津
五〇・〇三
一、〇二五、六一五
乙第一号証
(15)
佐藤義雄
同右
五〇・二四
一、二五六、〇〇〇
(16)
富所常好
同右
四七・二七
一、二六〇、〇〇〇
争いなし
(17)
神岡定雄
同右
四八・二五
一、三〇〇、二七五
乙第一九号証及び一一号証
計
四二、四〇五、五二〇
(一) (13)三野栄治分
原告の同人に対する売却土地は正式測量の結果六九坪であることが判明したので、これに坪単価を乗じ、二、〇〇一、〇〇〇円となつたものである。なお、被告は、本訴において、いつたん、第一回契約における地積を概算で約六五坪と見積り、これに坪単価二九、〇〇〇円を乗じて得た額一、八八五、〇〇〇円を契約金額として主張したことがあるが、前記のとおり訂正する。
(二) (15)佐藤義雄分
本件土地については坪当り単価二五、〇〇〇円により売上高を計算したものである。
右坪当り単価が正当なことは、原告が同一時期に売却した本件土地の隣接地の真実の売買坪単価が神岡定雄二七、〇〇〇円、富所常好二七、〇〇〇円の売買実例からみてもいい得るところであり、本件土地が少なくとも坪単価二五、〇〇〇円、総額一、二五六、〇〇〇円で取引されたことは疑いない。
2 受取仲介手数料
(単位 円)
契約月日
売主
買主
被告主張額
証拠等
40・3・9
(株)小沢商事
不明
五〇〇、〇〇〇
乙第二三号証
青木勇 外一八件
三八九、七五〇
争いなし
計
八八九、七五〇
株式会社小沢商事分
原告は埼玉県川越市の土地譲渡の取引において株式会社小沢商事から手数料として五〇〇、〇〇〇円受領している。
3 売上原価
(単位 円)
区分
所在地
被告主張額
証拠等
<1>期首棚卸高
昭和三九年分期末棚卸高に同じ。
<2>仕入高
東村山市秋津四丁目
(仕入先 栗原松吉 二三五坪)
四、七〇〇、〇〇〇
甲第三六号証の三
久留米町南沢北原
外四件の土地
三九、三〇三、九〇五
争いなし
計
四四、〇〇三、九〇五
明細は別表三ロ欄のとおり
<3>期末棚卸高
東村山市秋津四丁目
一、三一五、八〇〇
所沢市山口
外一〇件の土地
三一、九四三、五九五
争いなし
計
三三、二五九 三九五
明細は別表三ニ欄のとおり
売上原価
<1>+<2>-<3>
二八、五一四、二四〇
(一) 東村山町南秋津中沢地域の昭和四〇年期末棚卸高の計算根拠は次のとおりである。
すなわち、同地域の同年一月一日現在の期首棚卸面積は三〇六・五三坪(別表三イ欄8・9番参照)で、同年中仕入は二三五坪(別表三ロ欄(16)番「栗原松吉」分)であり、同年中における同地域の土地の売上坪数は八件合計四三一・九一坪である(別表三ハ欄8・9・(16)番)。従つて、右期首棚卸面積三〇六・五三坪と右仕入面積二三五坪の合計五四一・五三坪から右売上面積四三一・九一坪を差し引いた一〇九・六二坪(被告主張額は一〇九・六五坪であるが、右差額〇・〇三坪分は分譲実測による誤差と思われる。)が同四〇年一二月三一日現在の期末棚卸面積となる。
(二) しかして、東村山町南秋津中沢地域の土地について、昭和四〇年中に栗原松吉から仕入れた二三五坪は、同年中に全部売却されていることが確認されたため、同地域の同四〇年一二月三一日現在の期末棚卸面積一〇九・六五坪は同年期首棚卸面積三〇六・五三坪の一部が残つたものであることは明らかであることから、被告は前記昭和三九年分三の3の(二)で述べたところと同様の理由により単価一二、〇〇〇円で評価して、同年期末棚卸高を一、三一五、八〇〇円と算定したものである。
(加算税賦課決定の適法性)
原告は、本件訴訟の係争年分の昭和三八年分、同三九年分の所得税について給与所得があるにかかわらず給与所得金額を申告せず、また、事業所得についてもすでに主張したとおり申告すべき所得金額を過少に申告するとともに別表四ないし六のとおりその所得金額の計算に当り、その基礎となる事実をいんぺい又は仮装して不当に所得税を免れていた。
よつて、国税通則法六五条一項及び六八条一項の規定に基づき次表の計算によつて過少申告加算税及び重加算税を賦課決定したものであり、何らの違法はない。
(単位 円)
年分
昭和三八年分
昭和三九年分
昭和四〇年分
所得税額
四、九〇二、〇〇〇
六、五九六、六〇〇
二、一四五、三〇〇
過少申告加算税額の計算の基礎となるべき税額
一、六一三、〇〇〇
三、二九三、〇〇〇
〇
右に乗ずる割合
一〇〇分の五
一〇〇分の五
一〇〇分の五
過少申告加算税額
八〇、六〇〇
一六四、六〇〇
〇
重加算税額の計算の基礎となるべき税額
二、二五一、〇〇〇
二、〇一七、〇〇〇
一、三二五、〇〇〇
右に乗ずる割合
一〇〇分の三〇
一〇〇分の三〇
一〇〇分の三〇
重加算税額
六七五、三〇〇
六〇五、一〇〇
三九七、五〇〇
重加算税計算の対象となつた所得金額
四、三六五、六五〇
三、六六九、三七五
三、〇六四、八〇二
第四被告の主張に対する原告の認否及び反論
(昭和三八年分)
一 所得の内訳中、不動産所得及び給与所得の各金額は認め、事業所得金額は争う。
事業所得の金額は、三、八七〇、七二九円である。
二 事業所得金額中、売上原価及び必要経費のうち旅費通信費を除く部分を認め、その余は争う。
売上高は、三〇、九四六、八〇〇円、受取仲介手数料は一、二八〇、五〇六円、旅費通信費は六〇六、〇六七円である。
三 (事業所得金額の内訳)
1 被告主張の売上高明細のうち左記一覧表記載の売上先に対する売上高は争うが、その余は認める。
なお、原告は、(24)藤木弘に対する売上高について、はじめ被告の主張を認めたが、それは真実に反する陳述で錯誤に基づいてしたものであるから、その自白を撤回する。
(原告の争う売上先及び売上金額一覧表。ただし土地の所在地・坪数は被告主張のとおり。単位 円)
符号
売上先
原告主張の売上金額
証拠等
(4)
山下靖生
五六四、〇〇〇
(5)
塩沢春茂
五〇四、〇〇〇
(6)
深谷一雄
五〇四、〇〇〇
甲第一号証の一、二
(7)
鈴木勇
五五三、五六〇
甲第二号証の一、二
(9)
荒木節夫
六六二、〇四〇
甲第三号証
(16)
熊谷毅
三四〇、〇〇〇
甲第四号証の一、二
(18)
免取英雄
一、〇三〇、〇八〇
甲第五号証の一、二
(20)
竹村竹一
一〇〇、〇〇〇
甲第六号証の一、二
(21)
薄井武司
五八九、四四〇
甲第三〇号証
(22)
小池昭一
四三四、四〇〇
(24)
藤木弘
三三八、九四〇
甲第七号証の一、二
(29)
館野文男
九一〇、二五〇
甲第八号証の一、二
(一) 売上先符号(4)山下靖生、(5)塩沢春茂、(6)深谷一雄、(7)鈴木勇、(9)荒木節夫、(20)竹村竹一、(22)小池昭一に対する各売上金額が被告主張の金額と相違するのは、右各買主において東京都等から融資を受けられる金額は売買価額の七〇パーセントに留まるということであるので、契約価額の水増しをしたことによるものであつて、実際の売買価額はその七〇パーセントに相当するものである。
(二) 売上先符合(20)竹村竹一との売買契約は昭和三八年一一月六日に売買価額五〇二、四四〇円で締結され、同日原告は手付金として一〇〇、〇〇〇円受領したが、残代金四〇二、四四〇円は昭和三九年三月末日土地所有権移転登記と同時に支払をうける約定であつた。
ところで、国税庁通達一九八によれば、事業所得については、「権利の確定する時期は原則として収入すべき金額の基礎となつた契約の効力発生の時」とされているところ、竹村との売買契約においては、昭和三八年中は所有権移転登記は未履行であり、代金債権は不確定であるから土地売買による利益を得たということにはならず、従つて、残代金四〇二、四四〇円は昭和三九年分の収入に帰属するものというべきである。
2 被告主張の受取仲介手数料のうち、峯岸寅松外五件九八七、八〇〇円は認め、その余は争う。
福和商事から手数料を受領したことはないし、東京コンクリートから受領した手数料は二九二、七〇六円である。
3 被告主張の売上原価は認める。
4 被告主張の必要経費の金額六、六一四、三二七円のほかに、旅費通信費三四八、五〇〇円がある。
右費用は、原告が事業遂行の必要上東南アジアに旅行した際の所要経費であり、個人的な観光渡航費用ではない。
(昭和三九年分)
一 所得の内訳中、不動産所得及び給与所得の各金額は認め、事業所得金額は争う。
事業所得金額は、五、八一〇、一二九円である。
二 事業所得金額中、必要経費のうち接待交際費を除く部分のみを認め、その余は争う。
売上高は二一、二八〇、五四〇円、受取仲介手数料は七、二五七、二八五円、売上原価は一三、六四〇、三四五円、接待交際費は三、〇二八、一三八円である。
三 (事業所得金額の内訳)
1 被告主張の売上高明細のうち左記一覧表記載の売上先に対する売上高は争うが、その余は認める。
なお、原告は、(1)新藤千恵に対する売上高、坪数について、はじめ被告の主張を認めたが、それは真実に反する陳述で錯誤に基づいてしたものであるから、その自白を撤回する。
(原告の争う売上先及び売上高金額一覧表。ただし、土地の所在地・坪数(((1)新藤千恵を除く))は被告主張のとおり。単位 円)
符号
売上先
原告主張の売上金額
証拠等
(1)
新藤千恵
六一六、〇〇〇
甲第九号証の一ないし三甲第三四号証
(2)
真島栄
〇
売上金六五〇、〇〇〇円は昭和三八年分に帰属甲第一〇証の一、二
(10)
臼井昭志
七三二、八三〇
甲第一一号証の一、二
(11)
肥沼豊
九二七、一八〇
甲第一二号証
(12)
本田博
一、〇八八、一〇〇
甲第一三号証の一、二
(13)
小堀澄子
六三六、一二〇
甲第一四号証の一、二
(14)
鈴木常弘
七四二、六八〇
甲第一五号証の一、二
(17)
田中一就
一、二六九、二〇〇
甲第一六号の一、一二
(18)
黒田道雄
六三五、五八〇
甲第一七号証の一、二
(19)
仁木功
一〇〇、〇〇〇
残代金五三四、八六〇円は昭和四〇年分に帰属甲第一八号証
(一) 売上先(1)新藤千恵に対する売却坪数は五六坪である。
(二) 売上高(2)真島栄との売買契約は昭和三八年九月一〇日代金六五〇、〇〇〇円で締結されたが、右代金は同年一二月二五日所有権移転登記と同時に支払う約定であつた。従つて、右売上は昭和三八年分に帰属すべきものである。
(三) 売上先(12)本田博、(13)小堀澄子に対する各売上金額が被告主張額と相違するのは、両買主とも日本電建株式会社から融資を受けるため代金額の水増しをしたからである。
(四) 売上先(19)仁木功との売買契約は、昭和三九年一二月四日代金六三四、八六〇円で締結され、内金一〇〇、〇〇〇円は手附金として同日受領したが、残代金五三四、八六〇円は昭和四〇年一月七日所有権移転登記と同時に支払う約定であつた。従つて、右残代金による売上は昭和四〇年分の収入に帰属すべきものである。
2 被告主張の受取仲介手数料のうち、名島タカ外二四件一、二五七、二八五円は認め、その余は争う。
丸善建設株式会社から受領した手数料は六、〇〇〇、〇〇〇円である。
3 被告主張の売上原価のうち、
<1> 期首棚卸高は認める。
<2> 仕入高中、中武土地(株)からの仕入高二、五〇〇、〇〇〇円は認める。松村モヨ子からの仕入高は一一、七八〇、〇〇〇円である。
<3> 期末棚卸高は一八、八四二、五八五円である。
4 被告主張の必要経費のうち、接待交際費を除く必要経費の金額は認める。
接待交際費は被告主張の金額のほかに、二、二七〇、〇〇〇円の支出がある。
(昭和四〇年分)
一 所得の内訳中、不動産所得の金額は認め、事業所得金額は争う。同所得金額は二、六三一、一七四円である。
二 事業所得金額の内訳はいずれも争う。
三 (事業所得金額の内訳)
1 被告主張の売上高明細のうち左記一覧表記載の売上先に対する売上高は争うが、その余は認める。
(原告の争う売上先及び売上金額一覧表。ただし、土地の所在地・坪数は被告主張のとおり。単位 円)
符号
売上先
原告主張の売上金額
証拠等
(4)
山崎浩
一、八六二、五四〇
甲第一九号証の一、二
(5)
山田実
四、三七〇、〇〇〇
甲第二〇号証
(10)
岩渕文男
三〇〇、〇〇〇
残代金五七三、二五〇円は昭和四一年分に帰属甲第二一号証の一、二
(11)
服部昭吉
一、二二八、〇〇〇
甲第二二号証
(12)
浜勝子
一、〇〇〇、〇〇〇
残代金一、〇〇〇、〇〇〇円は昭和四一年分に帰属甲第二三号証
(13)
三野栄治
一、七二四、五〇〇
甲第二四号証の一、二
(14)
神座康夫
九〇〇、五四〇
甲第二五号証の一、二
(15)
佐藤義雄
九〇四、一二〇
甲第二六号証の一、二
(17)
神岡定雄
七六八、五〇〇
残代金一〇〇、〇〇〇円は昭和三九年分に帰属甲第二八号証の一、二
(一) 売上先(10)岩渕文男との売買契約は、昭和四〇年八月三〇日代金八七五、二五〇円で締結されたが、内金三〇〇、〇〇〇円は同日手附金として支払われ、残代金五七五、二五〇円は昭和四一年七月末日所有権移転登記と同時に支払うとの約定であつた。従つて、昭和四〇年分の売上高は三〇〇、〇〇〇円であり、五七五、二五〇円は昭和四一年分の収入に帰属すべきものである。
(二) 売上先(12)浜勝子との売買契約は、昭和四〇年九月九日代金二、〇〇〇、〇〇〇円で締結されたが、内金五〇〇、〇〇〇円は同日、五〇〇、〇〇〇円は同年一一月二八日、内金五〇〇、〇〇〇円は昭和四一年一月三〇日、五〇〇、〇〇〇円は同年四月二八日所有権移転登記と同時にそれぞれ分割して支払う約定であつた。従つて、昭和四〇年分の売上高は一、〇〇〇、〇〇〇円であり、残余の一、〇〇〇、〇〇〇円は昭和四一年分の収入に帰属すべきものである。
(三) 売上先(10)岩渕文男、(13)三野栄治に対する売上金額が被告主張額と相違するのは、同人らが東京都より融資をうける必要上契約金額の水増しをしたためである。なお、被告が(13)三野栄治に対する売上金額の主張を訂正することについては異議がある。
(四) 売上先(17)神岡定雄との売買契約は昭和三九年一〇月二二日代金八六八、五〇〇円で締結され、内金一〇〇、〇〇〇円は同日手附金として支払われ、残代金七六八、五〇〇円は昭和四〇年二月末日所有権移転登記と同時に支払う約定であり、かつ、右のとおり履行されたものである。従つて、昭和四〇年分の売上金額は七六八、五〇〇円であり、一〇〇、〇〇〇円は昭和三九年分の収入に帰属すべきものである。
2 被告主張の受取仲介手数料のうち、青木勇外一八件三八九、七五〇円は認め、その余は争う。
3 被告主張の売上原価のうち、
(一) 仕入高中、仕入先栗原松吉の分以外は認める。仕入先栗原松吉からの仕入高は五、一一九、六〇〇円である。被告主張額との差額四一九、六〇〇円は造成費用である。
(二) 期末棚卸高中、所沢市山口外一〇件の土地三一、九四三、五九五円は認めるが、その余は争う。
(加算税賦課決定について)
一 原告は、夫の坂田義一とともに丸三商事株式会社の代表取締役ではあつたが、不動産取引の一切を義一に委せていたし、右義一は経理事務、納税申告等については同人が依頼した訴外竹井京にすべてをとり行わせていた。従つて、原告ら夫婦が本件各所得金額の基礎たる事実を故意に隠ぺい又は仮装したことはない。
二 本件不動産取引において売上金額につき双方の主張に差額が生ずるのは、右取引に第三者が介在し、これに対し指値売買またはリベートの支払などがなされたことによるものである。
また、買主が売買代金の水増しをすることにより、実際の買入資金相当額を他から借入れることは、不動産取引においては世上屡々行われているところであつて、被告においてこの事実の有無を調査することもなく、否定し去るのは不当である。
第五原告の反論に対する被告の再反論
一 原告は、本件口頭弁論期日において一度は昭和三八年分の売上先(24)藤木弘及び昭和三九年分の売上先(1)新藤千恵に対する各売上高を認めながら、その後右自白を撤回しているが、これについては異議がある。
二 売上金額の帰属課税年分について
原告は、左記各売上先についての売上金額はいずれも全部又は一部において被告主張の帰属課税年分と異なると主張するのである。
(単位 円)
符号
売上先
被告主張
原告主張
年分
金額
総額
年分
金額
(20)
竹村竹一
三八年
九〇〇、〇〇〇
五〇二、四四〇
三八年
一〇〇、〇〇〇
三九年
四〇二、〇〇〇
(2)
真島栄
三九年
六五〇、〇〇〇
六五〇、〇〇〇
三八年
六五〇、〇〇〇
(19)
仁木功
三九年
八八二、〇〇〇
六三四、八六〇
三九年
一〇〇、〇〇〇
四〇年
五三四、〇〇〇
(10)
岩渕文男
四〇年
一、〇一五、二九〇
八七五、二五〇
四〇年
三〇〇、〇〇〇
四一年
五七五、二五〇
(12)
浜勝子
四〇年
二、〇〇〇、〇〇〇
二、〇〇〇、〇〇〇
四〇年
一、〇〇〇、〇〇〇
四一年
一、〇〇〇、〇〇〇
原告の主張するところは、要するに、収入金額に計上すべき時期は代金の弁済期として約定された日であり、分割弁済のときは弁済期ごとに収入金額として計上すべきであるというのである。しかし、このような現金主義的な考え方が原告の引用する通達の趣旨に反することは明らかである。
三 売買契約書記載の金額が水増しをされた金額であるとの主張について
原告は、売上先との間に交した売買契約書記載の金額と実際の契約金額と相違するものがあるのは、買主が東京都その他から融資をうける際に提出した売買契約書に水増しをした契約金額を記載したからであると主張するが、以下のとおり失当である。
1 昭和三八年分売上先(9)荒木節夫に対し、一、一〇二、四〇〇円で売却したことは、丸三商事株式会社又は坂田義一名義の領収証(乙第三号証の三乃至五)に照らし明らかであるところ、右訴外人が東京都庁へ提出した売買契約書(乙第三九号証)の代金額は、右金額と同額であり、従つて、右売買契約書は真実の取引金額を記載したものであると認められる。
昭和三八年分売上先(7)鈴木勇、(20)竹村竹一及び昭和四〇年分売上先(13)三野栄治に対する売上金額は、すでに主張したとおり、八三九、三〇〇円、九〇〇、〇〇〇円、二、〇〇一、〇〇〇円であるが、右主張金額は乙第二号証、乙第六号証、乙第一七号証に照らし正当である。従つて、同人らとの売買契約書(乙第三五号証、乙第四〇号証及び乙第四五号証)は、真実の契約金額を記載したものであり、水増し金額を記載したものとは認められない。
右のような状況からすれば、昭和三八年分売上先(4)山下靖生、(5)塩沢春茂、(22)小池昭一がそれぞれ東京都へ提出した売買契約書も真実の売買金額を記載したものと認められる。
2 昭和三九年分売上先(12)本田博、(13)小堀澄子らについては、日本電建から融資をうける必要上売買契約金額の水増しをして契約書に記載したと原告は主張するけれども、日本電建の場合においても買主らが融資をうけるため金額を水増ししなければならない必要性は全く存しないのであつて、原告の右主張は失当である。
四 重加算税賦課決定について
原告は、本件取引(契約締結、代金受領の一切)のすべては坂田義一が取り仕切つていたものであり、経理及び納税申告も義一が依頼した竹井京に全部を任せていたから、被告の行つた重加算税の賦課決定処分は違法である旨主張する。
しかしながら次に述べるとおり原告の右主張は失当である。
原告は、事業の取引及び経理等を坂田義一及び竹井京に一任していた旨主張するが、原告及び原告の夫である坂田義一も認めているとおり、不動産業は原告ら夫婦の共同で営まれ、その主体が原告であつたことは、原告名義で申告していること、実質的な対外的交渉及び取引における判断等は原告がなしていたことなどからも明らかで、不動産業の主導権は原告がにぎつており、仮装隠ぺいの事実を原告が知らなかつたなどということはあり得べきことではない。
なお、仮に原告が、原告主張のように隠ぺい又は仮装の事実を知らなかつたとしても、重加算税制度の趣旨に鑑みれば、従事員等による隠ぺい又は仮装行為について本人がそれを知らなかつたことを理由に重加算税の賦課を免れえないことは判例の示すところである。
第六証拠関係<省略>
理由
請求原因一の事実は当事者間に争いがない。そこで以下各係争年分にかかる本件各更正及び本件各賦課決定の当否につき検討する。
原告は、先ず、本件各係争年分の所得が原告に帰属することを自認しながら、右各年分の所得を原告名義で申告したのは、被告係官長松某及び小原某らから強要されたことによるものであると主張する。しかしながら、原告において右各年分の所得が自己に帰属することを認める以上、原告の右主張は矛盾するのみならず、本訴における審判の対象は本件各更正及び本件各賦課決定において認定された課税標準または税額が客観的に存在するか否かであつて、原告の主張する事実がこれとどのように関連するのかについて原告の主張は全く明らかでない。よつて、原告の右主張はそれ自体失当として採用しない。
第一昭和三八年分の所得金額
原告の昭和三八年分の所得のうち、不動産所得及び給与所得の金額については当事者間に争いがない。よつて、事業所得の金額の当否につき考究すべきところ、右金額の算出上、必要経費のうち、旅費通信費以外の経費の各金額については争いがないので、以下順次、売上高、受取仲介手数料、売上原価及び旅費通信費の各金額について判断する。
一 売上高
1 売上先(1)中井寿美子、(2)深江俊郎、(3)佐野康典、(8)内山久子、(10)荒木敏子、(11)本田喜代治、(12)山田久代、(13)山田久代、(14)綾部利政、(15)中野愛子、(17)志田淳男、(19)高橋忠弥、(23)小沢幸磨、(25)岡田徳太郎、(26)宮村良蔵、(27)氏名不詳、(28)松原祐吉、(30)渋谷食品、(31)菊地、(32)日ノ出不動産と原告との間の土地売買契約につき代金額及び右代金の収入すべき年分が被告主張のとおりであることは当事者間に争いがない。
2 そこで、以下順次争いある売上高につき検討する。
証人坂田義一の証言及び原告本人尋問の結果によると、原告は昭和三一年一月ころから夫坂田義一とともに丸三土地の商号で不動産の売買及び仲介を業としている者であることが認められる。
(一) 売上先(4)山下靖生に対する売上高
証人石川新の証言並びに弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第三八号証によると、原告は昭和三八年六月一九日夫義一を介して山下靖生に対し被告主張の土地を代金八八四、七〇〇円で売却し、同金額の売上を得たことが認められる。右認定を左右するに足りる証拠はない。
(二) 同(5)塩沢春茂に対する売上高
証人石川新の証言並びに弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第三七号証によると、原告は昭和三八年六月一五日夫義一を介して塩沢春茂に対し被告主張の土地を代金七五六、〇〇〇円で売却し、同金額の売上を得たことが認められる。右認定を左右するに足りる証拠はない。
(三) 同(6)深谷一雄に対する売上高
証人小澤才介の証言によりいずれも真正に成立したと認められる乙第一、二六号証及び同証人の証言によると、原告は昭和三八年五月ころ深谷一雄に対し被告主張の土地を代金六七二、〇〇〇円(坪当り一六、〇〇〇円)で売却したことが認められる。
もつとも、証人深谷一雄の証言により真正に成立したものと認められる甲第一号証の一、二及び同証人の証言中には、原告の同人に対する売上高が原告主張のとおり五〇四、〇〇〇円であるとの記載及び供述部分もあるが、前記乙第一、二六号証及び証人小澤才介の証言に照らしいずれもたやすく措信することができないし、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
(四) 同(7)鈴木勇に対する売上高
証人石川新の証言並びに弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第三五号証、証人小澤才介の証言によりいずれも真正に成立したと認められる乙第二、二六号証及び証人小澤才介の証言によると、原告は昭和三八年六月一九日夫義一を介して鈴木勇に対し被告主張の土地を代金八三九、三〇〇円で売却し、同金額の売上を得たことが認められる。
もつとも、証人鈴木勇の証言により真正に成立したものと認められる甲第二号証の一、二及び同証人の証言中には原告の鈴木勇に対する売上高が原告主張のとおり五五三、五六〇円であるとの記載及び供述部分もあるが、前掲乙第二、二六、三五号証及び証人小澤才介の証言に照らしいずれもたやすく措信することができないし、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
(五) 同(9)荒木節夫に対する売上高
弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第三号証の一、二、証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる乙第三号証の三ないし五、証人石川新の証言並びに弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第三九号証によると、原告は昭和三八年六月一九日夫義一を介し荒木節夫に対し被告主張の土地を代金一、一〇二、四〇〇円で売却し、同金額の売上を得たことが認められる。
もつとも、証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第三号証及び同証人の証言中には原告の荒木節夫に対する売上高が原告の主張どおり六六二、〇四〇円であるとの記載及び供述部分もあるが、前記乙第三号証の一ないし五、同第三九号証に対比するといずれもたやすく措信することができないし、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
(六) 売上先(26)熊谷毅に対する売上高
前掲乙第一号証、成立について争いのない乙第四号証、証人小澤才介の証言により真正に成立したものと認められる乙第二六号証及び同証人の証言によると、熊谷毅に対する原告の売上は三九六、六八〇円(内五六、六八〇円は深谷一雄に対するリベート)であつたことが認められる。
もつとも証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第四号証の一、二及び同証人の証言中には、原告の主張するように売上高は三四〇、〇〇〇円であるとの記載及び供述部分もあるが、前記乙第一、四、二六号証及び証人小澤才介の証言に対比すると、たやすく措信することができないし、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
(七) 同(18)免取英雄に対する売上高
証人小澤邦重の証言により真正に成立したものと認められる乙第五号証及び同証人の証言によれば、免取英雄に対する売上高は被告主張とおりの金額であることが認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。
(八) 同(20)竹村竹一に対する売上高
証人田中松次郎の証言により真正に成立したものと認められる乙第六号証、証人石川新の証言並びに弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第四〇号証及び証人田中松次郎の証言によると、原告は昭和三八年一〇月一九日竹村竹一に対し係争宅地を代金九二四、〇〇〇円(坪当り単価二二、〇〇〇円)で、内金三五〇、〇〇〇円を手附として同日、内金五七四、〇〇〇円は昭和三九年三月三〇日所有権移転登記手続と同時に支払う約束で売渡したところ、その後、同年一〇月一九日に五〇、〇〇〇円、同年一一月二一日三〇〇、〇〇〇円、同年一二月三〇日一〇〇、〇〇〇円、翌昭和三九年三月三日三二〇、〇〇〇円、同年六月四日一三〇、〇〇〇円合計九〇〇、〇〇〇円の支払を受け、右金額を以て契約代金額とし、その支払を授受するとともに同年六月四日所有権移転登記手続を完了したものであることが認められる。
証人坂田義一の証言により真正に成立したと認められる甲第六号証の一、二及び同証人の証言中には、昭和三八年一一月六日代金額を五〇二、四四〇円とし、即日手附として一〇〇、〇〇〇円、残金は翌昭和三九年三月末所有権移転登記手続と同時に支払う旨約定したとの記載及び供述部分もあるが、前掲乙第六号証、第四〇号証に対比しにわかに措信しがたいといわざるをえないし、他に右認定を覆すに足る証拠はない。してみれば、契約代金は九〇〇、〇〇〇円と認めるのが相当である。
もつとも、原告の右代金九〇〇、〇〇〇円については、前記認定によれば、後記4記載のとおり、売買残代金の授受を完了し、所有権移転登記手続を履行した昭和三九年六月四日にその収入すべき権利が確定したものであるから、同売上高は、昭和三九年の所得に帰属するというべきである。してみれば、右売上高が昭和三八年分の所得に属するとする被告の主張は失当というべきである。
(九) 同(21)薄井武司に対する売上高
証人小澤邦重の証言により真正に成立したと認められる乙第七号証及び同証人の証言並びに弁論の全趣旨によれば、原告は昭和三八年一〇月二八日係争宅地四九坪一二を代金八二〇、〇〇〇円で売却し、同金額の売上を得たことを認めることができる。
前掲乙第四号証及び証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第三〇号証並びに同証人の証言中には、原告の主張にそう記載ないし供述部分もあるが、前掲乙第七号証及び証人小澤邦重の証言に照らしたやすく措信することができないし、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
(一〇) 同(22)小池昭一に対する売上高
証人石川新の証言並びに弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる乙第三六号証によれば、売上高は被告主張のとおりと認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。
(一一) 同(24)藤木弘に対する売上高
原告は被告主張の藤木弘に対する売上高を自白しながらこれを撤回するのでその当否を検討する。
前掲乙第四号証及び証人小澤才介の証言によると、原告は昭和三八年六月ころ、被告主張の土地を代金四五一、九二〇円(仲介人に対するリベート三七、六六〇円を含む)で売却し同金額の売上を得たことを認めることができる。
甲第七号証の一、二には原告の主張にそう記載部分もあるが、右乙第四号証及び証人小澤才介の証言に照らしにわかに措信することができない。よつて、原告の自白は真実に反しないから、その撤回は許されないといわなければならない。
(一二) 同 館野文男に対する売上高
証人小澤才介の証言により真正に成立したものと認められる第八号証及び同証人の証言によれば、原告は昭和三八年夏ころ館野文男に対し宅地(三六坪四一)を代金一、四九二、八一〇円で売却し、同額の売上を得たこと、しかるに代金の領収証には金額を九一〇、二五〇円と記載して館野文男に交付したことを認めることができる。
前掲乙第四号証、証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第八号証の一、二及び同証人の証言によると、原告の主張にそう記載ないし供述部分もあるが、前記乙第八号証及び証人小澤才介の証言に照らしたやすく措信することができない。他に右認定を覆すに足る証拠はない。
3 原告は、以上の(一)ないし(五)、(八)、(一〇)の各売上先に対する売上金額については、いずれも買主が融資を受ける関係上、水増しをした契約金額を記載した契約書が作成されたが、実際の契約金額はその七〇パーセントに留まるものであると主張する。なるほど、証人石川新の証言並びに弁論の全趣旨によりいずれも真正に成立したものと認められる乙第三五ないし第四〇号証及び証人石川新の証言によれば、右各売上先(深谷一雄分を除く。)において原告から宅地を購入するに際して、東京都から住宅資金として貸付を受け、本件売買代金の一部に充てたことをそれぞれ認めることができるが、同証人の証言によると、東京都における住宅資金としての融資額の限度は、所定面積の範囲内の土地につき時価の六割というように基準額が定められており、契約金額が基準となるものではないことが認められる。従つて、融資を受けるために契約金額の水増しをした契約書を作成する必要があつた旨の原告の主張には何ら合理性がないというべく、右各売上先に対する売上金額はすでに述べたとおりの額と認定するのが相当である。
4 原告は、前記売上先(20)竹村竹一との取引による売上金額のうち、昭和三八年分の収入に帰属すべきものは、同年中に支払を受けた金額のみであつて、翌年に支払を受けるべきその余の約定残代金については翌昭和三九年分の収入に属すると主張する。(なお、この帰属収入年分に関する主張は、後記の昭和三九年分の売上先(19)仁木功、昭和四〇年分の売上先(10)岩渕文男、(12)浜勝子、(17)神岡定雄についても同様である。)
ところで、当該年分において所得金額の計算上収入金額とすべき金額は、原則としてその年において収入すべき金額であることは所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)一〇条により明定されているところであつて、右収入すべき金額とは収入すべき権利の確定した金額をいうと解すべきところ、本件において、その権利確定の時期を検討するに、証人坂田義一の証言及び弁論の全趣旨によると、原告が土地の売買をなすにあたつては、土地の仕入につきその購入代金の一、二割の手附金を先ず地主に支払い、買主たる地位を確保し、その後半年ないし一年間位の期間内に転売先(すなわち顧客)を探し求め、買主が見つかると、これとの間に売買契約を締結し(その際、手附金の授受を伴う)、その後、数か月経て最終的に残代金の支払を受けるとともに、旧地主から自己の顧客である買主に中間省略による所有権移転登記手続を履行するというのが原告方における大半の営業方法であること、そして前記売上先竹村竹一外四名との取引も右の例にあたるものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。
右認定のような原告方での土地の仕入から販売に至るまでの通例の業態からすれば、原告と顧客との間に締結された土地売買契約において特段の事情のない限り、本件において原告の顧客に対する代金につき収入すべき権利が確定した時期は、顧客の最終残代金の支払と同時に所有権移転登記手続の履行が完了したときと解するのが相当である。
そうすると、昭和三八年分売上先(20)竹村竹一についてのみならず、後記の昭和三九年分売上先(19)仁木功、昭和四〇年分売上先(10)岩渕文男、(12)浜勝子、(17)神岡定雄についてはいずれも、売買契約締結日と最終の約定残代金支払ないし所有権移転登記手続を了した日とが両年分にまたがつているが、いずれの契約においても特段の事情が認められない以上(右特段の事情について被告の主張・立証はない)、前述のとおり、本件各土地の売買代金について、その収入すべき権利が確定するのは最終の約定残代金支払ないし所有権移転登記手続を了した日の属する年においてであるから、右年次が原告の当該土地売却にかかる代金についての収入すべき権利の帰属する年分というべきである。
5 以上により昭和三八年分の売上高は、被告の主張する三六、四一四、七六〇円から、前記のとおり昭和三九年分に帰属すべき売上先(20)竹村竹一に対する売上九〇〇、〇〇〇円を控除した三五、五一四、七六〇円となる。
二 受取仲介手数料
1 原告が峯岸寅松外五件合計九八七、八〇〇円の仲介手数料を取得したことは当事者間に争いがない。
2 福和商事の仲介手数料
成立に争いのない甲第三三号証、証人森圭吉の証言により真正に成立したものと認められる乙第二一号証、証人石川新の証言により真正に成立したものと認められる乙第五〇号証、右証人森、同石川の各証言、証人西村信夫の証言を総合すると、原告は、昭和三八年一月ころ被告主張の経緯のもとに福和商事から土地売買の仲介手数料として二、〇〇〇、〇〇〇円の支払を受けたことを認めることができる。証人坂田義一の証言及び原告本人尋問の結果中には、右支払を受けたことがない旨の供述部分があるけれども、前記各証拠に照らしにわかに措信することができない。この他に右認定事実を左右するに足りる証拠はない。
3 東京コンクリートの仲介手数料
前掲乙第二六号証、証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる乙第二〇号証の一、二及び証人小澤才介の証言によると、原告は、東久留米市(旧東京都北多摩郡久留米町)下里所在の土地売買を仲介し、昭和三八年三月及び四月の二回にわたり仲介手数料として東京コンクリート株式会社より合計五七二、七〇六円を受領したことを認めることができる。右認定に反する証人坂田義一、同川野昭一郎の各証言はにわかに措信し難く、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
4 以上により、原告が1ないし3の仲介手数料合計三、五六〇、五〇六円を受領したことは明らかというべきである。
三 売上原価
期首棚卸高二六、八八三、六三〇円、仕入高一二、七一三、〇五〇円、期末棚卸高一八、二〇二、九三〇円については、いずれも当事者間に争いのないところ、既に説示したように、被告が主張する昭和三八年中の竹村竹一に対する売上(東村山町南秋律字中沢七八三番地所在四二坪―前掲乙第四〇号証)は、同年分の売上に属すべきものではないのであるから、これを同年の右期末棚卸高に加算すべきである。
そして、証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第三五号証の一によれば、右土地の仕入単価は、坪当り八、〇〇〇円であることが認められるから、右土地の昭和三八年期末における評価額は三三六、〇〇〇円とみるのが相当である。
よつて、右金額を前記期末棚卸高一八、二〇二、九三〇円に加算すると、昭和三八年期末棚卸高は一八、五三八、九三〇円であり、従つて、昭和三八年の売上原価は、次の算式のとおり期首棚卸高に仕入高を加算し、これから期末棚卸高を控除した二一、〇五七、七五〇円となる。
(二六、八八三、六三〇円+一二、七一三、〇五〇円)-一八、五三八、九三〇円=二一、〇五七、七五〇円
四 必要経費(旅費通信費)
被告主張の旅費通信費二五七、五六七円については当事者間に争いがないところ、原告はこのほかに東南アジア渡航費用三四八、五〇〇円を経費として主張するのである。しかしながら、海外渡航費用は当該事業の遂行上直接必要であると認められる場合に限りその経費性が肯認されるものと解すべきところ、原告の主張はこの点において具体性に欠け、如何なる事由により海外渡航が事業の遂行上必要なのか全く不明というほかないから、到底これを斟酌することはできないといわざるをえない。
五 結論
原告の昭和三八年分の事業所得金額は、結局その内訳中、被告主張にかかる売上高三六、四一四、七六〇円を三五、五一四、七六〇円に、売上原価二一、三九三、七五〇円を二一、〇五七、七五〇円にそれぞれ減ずべき以外は被告主張金額のとおりであるから、差引一一、四〇三、一八九円と認められる。
(昭和三八年分の総所得金額)
前示認定にかかる事業所得金額を当事者間に争いのない不動産所得及び給与所得の各金額に加算すると、原告の昭和三八年分の総所得金額は一三、三二〇、六二六円と認められる。
よつて、被告の本件更正における認定額一一、五八七、九八六円は右金額を下まわるから正当というべきである。
第二昭和三九年分の所得金額
昭和三九年分の所得のうち、不動産所得及び給与所得については当事者間に争いがない。
そこで以下被告主張にかかる事業所得の金額の当否につき検討する。
一 売上高
1 売上先(3)広瀬裕、(4)伊藤賀明、(5)秋山不動産、(6)気賀沢昭三、(7)小山幸隆、(8)川島安久、(9)岡部秀夫、(15)市村つねよ、(16)羽賀新次郎と原告との間の土地売買契約につき代金額及び右代金の収入すべき年分が被告主張のとおりであることは当事者間に争いがない。
2 そこで以下順次争いある売上高につき検討する。
(一) 売上先(1)新藤千恵に対する売上高
原告は、被告主張の新藤千恵に対する売上高を自白しながらこれを撤回するのでその当否を検討する。
証人小澤才介の証言により真正に成立したものと認められる乙第二七号証及び同証人の証言によれば、原告は新藤千恵に対して宅地六七坪を代金八〇四、〇〇〇円で売却し、同額の売上を得たことを認めることができる。
もつとも証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第九号証の一ないし三、同第三四号証の一、二及び同証人の証言並びに原告本人尋問の結果中には、右新藤千恵が原告から買つた宅地の実測面積に誤りがあつたため、原告主張の宅地面積、代金で売買がなされたかの如き記載ないし供述部分もあるが、しかし、成立に争いのない乙第五二、五三号証、証人石川新の証言により真正に成立したものと認められる乙第四八、四九号証、同証人の証言及び証人小澤才介の証言によれば、新藤千恵は右宅地を購入後一年余経て、これを分筆したうえ、一〇坪を薄井武司へ、一坪を深谷一雄へそれぞれ売却したことが認められるところ、右事実からすれば、前記甲第九号証の一ないし三の記載内容並びに証人坂田義一の証言及び原告本人尋問の結果はいずれも採用することができないといわざるをえない。
よつて、原告の自白は事実に反するわけのものでもないからその撤回は許されないといわなければならない。
(二) 同(2)真島栄に対する売上高
成立につき争いのない乙第五一号証、証人小澤才介の証言により真正に成立したものと認められる乙第二七号証及び同証人の証言によると、原告は昭和三九年五月二〇日真島栄に対し被告主張の土地を代金六五〇、〇〇〇円(代金六五〇、〇〇〇円については当事者間に争いがない。)で売却し、同日ころ右代金の支払及び右土地所有権移転登記手続が完了したことを認めることができる。
成立に争いのない甲第一〇号証の一及び証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第一〇号証の二によると、右売買取引が昭和三八年七月又は九月ころ締結され、契約成立と同時に手附金一五〇、〇〇〇円、同年一二月二五日ころ所有権移転登記手続と同時に残代金を支払うとの約定がなされた旨の記載があるけれども、前記乙第二七、五一号証、証人小澤才介の証言に照らしたやすく措信できない。証人坂田義一の証言も右認定を左右するに足りない。
してみれば、原告が右取引により得た売上六五〇、〇〇〇円を昭和三九年分の収入に帰属するものとする被告の主張は相当というべきである。
(三) 同(10)臼井昭志に対する売上高
原告が昭和三九年中に臼井昭志に対し被告の主張する宅地三八・五七坪を売却したことは当事者間に争いがないところ、被告の主張する売上高についてはこれを直接証する証拠はない(前記乙第二七号証中には被告の主張する金額の記載はあるが、右認定の根拠が明らかではない。)。しかし、原告は、臼井昭志と同じ頃右宅地の近隣土地(右は弁論の全趣旨によつて認められる。)を後記認定のとおり、売上先(12)本田博、(13)小堀澄子、(14)鈴木常弘、(18)黒木道雄、(19)仁木功にそれぞれ売却しており、その間ではいずれも坪当り二六、〇〇〇円ないし二五、〇〇〇円で取引したことに照らすと、臼井昭志との間でも少なくとも坪当り二五、〇〇〇円で売買されたものと推認することができる。そうすると、右坪当り単価に取引面積を乗ずると被告主張の売上高となることは明らかである。
甲第一一号証の一、二及び証人坂田義一の証言中には、原告主張の売上額にそう記載ないし供述部分があるが、証人小澤才介、同田中松次郎の証言によれば、原告は異議申立及び審査請求当時において右書証を提出しておらず、本訴訟において初めてこれを提出したものであるばかりでなく、証人坂田義一の証言によると、右取引に関与した坂田義一すら右甲号証の作成の経緯については明らかではないと述べていることなどに照らすと右甲号証の記載は、措信できないし、証人坂田義一の前記供述もたやすく措信することはできない。
(四) 同(11)肥沼豊に対する売上高
証人小澤邦重の証言により真正に成立したものと認められる乙第九号証、同証人の証言及び証人肥沼佐武郎の証言を総合すると、原告は昭和三九年九月ごろ被告主張の宅地を肥沼豊に代金一、一〇〇、〇〇〇円で売却し、同額の売上を得たことを認めることができる。
証人肥沼佐武郎の証言により真正に成立したものと認められる甲第一二号証及び証人坂田義一の証言によれば、原告主張の売上高にそう記載及び供述部分もあるが、前記乙第九号証及び証人肥沼佐武郎の証言に照らしたやすく措信することができないし、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
(五) 同(12)本田博に対する売上高
証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる乙第四一号証、第四二号証の一、二によると、原告は昭和三九年九月一五日本田博に対し被告主張の宅地を代金一、五六〇、〇〇〇円で売却し、同金額の売上を得たことを認めることができる。
証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第一三号証の一、二及び同証人の証言によれば、原告主張の売上高にそう記載及び供述部分があるが、前記乙第四一号証、第四二号証の一、二に照らしたやすく措信することができないし、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
また、原告は、被告の主張する契約金額は、本田博が日本電建株式会社より融資を受けるために水増しをしたもので、実際の金額は原告の主張額であるというが、被告の主張する売上高は前記証拠により十分肯認できるのみならず、日本電建より融資をうけるにあたつて、宅地の買主が売主との間で契約額の水増しをする必要性はなんらこれを認めることはできないのであつて、原告の主張は失当である。
(六) 同(13)小堀澄子に対する売上高
証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる乙第四三号証、第四四号証の一、二によれば、原告は昭和三九年一一月二八日小堀澄子に対し被告主張の宅地を代金八八三、五〇〇円で売却したこと、小堀澄子は右代金のうち五〇〇、〇〇〇円を日本電建株式会社より融資をうけ、三八三、〇〇〇円は自己資金により支払つたことを認めることができる。してみれば、原告の同女に対する売上高は被告主張のとおりであると認められる。
もつとも、証人小堀澄子の証言により真正に成立したと認められる甲第一四号証の一、二、同証人の証言及び証人坂田義一の証言によれば、売買代金は原告主張の六三六、一二〇円であるとの記載及び供述部分があるけれども、証人小堀の右証言は、同証言により真正に成立したものと認められる乙第二五号証に対比すると、右宅地の買入価額とその後の転売したときの価額について首尾一貫しないものがあること、甲第一四号証の一、二はかねてより知己の関係にあつた原告の依頼によりこれに迎合して記載したものと窺われることなどにかんがみるとたやすく措信することができない。同様に原告の夫である証人坂田義一の証言も前記乙第四三号証、第四四号証の一、二に対比しにわかに採用することができない。他に前記認定を覆すに足る証拠はない。
さらに、原告は、被告主張の契約金額は、小堀澄子が日本電建株式会社より融資をうけるために水増しをしたものであるというが、前記売上先(12)本田博に対する売上高について述べたと同様の理由により原告の右主張は失当というほかない。
(七) 同(14)鈴木常弘に対する売上高
証人田中松次郎の証言により真正に成立したものと認められる乙第一〇号証及び同証人の証言並びに弁論の全趣旨によると、原告は昭和三九年九月ごろ鈴木常弘に対し被告主張の宅地を代金一、〇三一、五〇〇円(坪当り二五、〇〇〇円)で売却し、同金額の売上を得たこと、しかし同人との間に交した契約書(甲第一五号証の一)には坪当り一八、〇〇〇円代金七四二、六八〇円とする旨記載することとしたことを認めることができる。
してみれば、原告の鈴木常弘に対する売上高は被告主張のとおりであると認めることができる。
もつとも、証人鈴木常弘は原告との間で原告主張のとおりの金額で取引をしたと証言し、証人坂田義一の証言中にもこれを支持する部分がある。しかし証人鈴木の証言は、税務署職員の調査をうけたこと、右取引に仲介人として日本電建株式会社の職員塩沢春茂もしくは鈴木勇が介在していること―右事実は前掲乙第二号証及び証人田中松次郎の証言によりこれを認めうる―を完全に忘却しているだけでなく、鈴木証人の証言を前提にすれば、原告との取引が近隣宅地が坪当り二五、〇〇〇円であること―右事実は弁論の全趣旨により明らかである―に比べ著しく廉価であるにもかかわらず、このような有利な取引をなしたことについてなんら納得しうるような説明もないことにかんがみると、にわかに措信しがたいといわざるをえないし、証人坂田の証言もたやすく採用しがたいといわねばならない。
(八) 同(17)田中一就に対する売上高
証人小澤才介の証言により真正に成立したものと認められる乙第一号証及び同証人の証言並びに弁論の全趣旨によると、原告は昭和三九年中に仲介人深谷一雄らを介して被告主張の宅地を坪当り二五、〇〇〇円、代金一、六七〇、〇〇〇円で売却し、同金額の売上を得たことを認めることができる。
もつとも、前記甲第一六号証の一、二、証人坂田義一の証言によると、原告主張の金額で取引されたとの記載及び供述部分があるが、前記乙第一号証及び証人小澤才介の証言に照らしてたやすく措信しがたいし、前記認定に反する証人桑木百八郎、同深谷一雄の各証言もにわかに措信することができない。
他に前記認定を覆すに足る証拠はない。
(九) 同(18)黒田道雄に対する売上高
前掲乙第一号証、証人田中松次郎の証言により真正に成立したものと認められる乙第一一号証及び同証人の証言並びに弁論の全趣旨によると、原告は昭和三九年一一月一五日仲介人深谷一雄、小池昭一の仲介により黒田道雄に対し被告主張の宅地を坪当り二五、〇〇〇円、代金八八二、七五〇円で売却し、同金額の売上を得たことを認めることができる。
もつとも、甲第一七号証の一、二及び証人坂田義一の証言によると、原告主張の代金額で取引がなされたとの記載及び供述部分があるが、前記乙第一、一一号証及び証人田中松次郎の証言に照らしたやすく措信することができないし、右認定に反する証人深谷一雄の証言もにわかに措信しがたい。また、証人小池昭一の証言も前記認定を左右するに足りない。
(一〇) 同(19)仁木功に対する売上高
証人小澤邦重の証言により真正に成立したものと認められる乙第一二号証及び同証人の証言並びに弁論の全趣旨によると、原告は昭和三九年一二月ごろ桑木百八郎を介して仁木功に対し被告主張の宅地を坪当り二五、〇〇〇円代金八八二、〇〇〇円で売却し、右代金は二、三回に分割して支払をうけ、翌昭和四〇年一月所有権移転登記手続とともに残代金が完済されたことを認めることができる。
証人坂田義一の証言により真正に成立したと認められる甲第一八号証及び同証人の証言及び証人桑木百八郎の証言によると、原告の主張するように、右取引は坪当り一八、〇〇〇円でなされたとの記載及び供述部分があるが、前記乙第一二号証及び証人小澤邦重の証言に照らしたやすく措信できないし、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
もつとも、右代金八八二、〇〇〇円については、右認定事実からすれば、前記第一の一の4記載のとおり、代金の完済を受け、所有権移転登記手続を履行した昭和四〇年一月ごろにその収入すべき権利が確定したものというべきであるから、同金額の売上高は昭和四〇年分の所得に帰属するものと解すべきである。してみれば、右売上高が昭和三九年分に帰属するとの被告の主張は失当といわざるをえない。
3 以上により、昭和三九年分の売上高は、被告の主張する二五、一九三、九三〇円から、前記のとおり昭和四〇年分に帰属するものと解すべき売上先(19)仁木功に対する売上八八二、〇〇〇円を控除した二四、三一一、九三〇円となる。
二 受取仲介手数料
1 原告が名島タカ外二四件合計一、二五七、二八五円の仲介手数料を取得したことは当事者間に争いがない。
2 丸善建設株式会社の仲介手数料
証人小澤邦重の証言により真正に成立したものと認められる乙第二二号証、証人小澤邦重、同小澤才介の各証言によると、原告は夫義一を介して昭和三九年中に丸善建設株式会社から同社のために北多摩郡久留米町大字門前の土地売買取引のあつせん仲介したことによる手数料として、前後二回にわたり小切手及び手形により合計六、七五四、〇〇〇円の支払を受けたことを認めることができる。
証人坂田義一は、原告が受領した右金員のうち、七五四、〇〇〇円は茂木高行の受領すべき手数料を右茂木に代理して受け取つたものである旨供述するが、前掲乙第二二号証並びに証人茂木高行の証言に照らし、にわかに採用しがたく、他に前記認定を覆すに足る証拠はない。
3 以上により受取仲介手数料は八、〇一一、二八五円と認められる。
三 売上原価
1 期首棚卸高
被告の主張する昭和三九年の期首棚卸高一八、二〇二、九三〇円については当事者間に争いがない(もつとも、既に述べたとおり、竹村竹一に対する売上にかかる土地((東村山町南秋津字中沢七八三番地所在四二坪))は、昭和三八年の期末棚卸高に加算されるべきであり、従つて、本来は右当事者間に争いのない昭和三九年期首棚卸高にも同様にこれを加算すべきであるが、同土地は昭和三九年の売上として同年分の売上高に計上すべきであるところ、この点についての被告の主張はなく、また、これを計上しないことが、原告の不利益になるものでもないので、同土地の売上は、昭和三九年分の売上高に加算しないこととし、これに伴い売上原価の算出も、右土地を期首棚卸高に計上しないで計算することとする。)。
2 仕入高
中武土地株式会社からの土地一〇〇坪の仕入価額二、五〇〇、〇〇〇円(別表二番号13ロ)については当事者間に争いがない。
松村モヨ子からの土地七六〇坪の仕入(別表二番号12ロ)については、証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第三六号証の一によると、原告は昭和三九年三月同人から代金九、一二〇、〇〇〇円(坪当り一二、〇〇〇円)で買受けたことが認められる。右認定を左右するに足りる証拠はない。
従つて、同年分の仕入高は以上合計一一、六二〇、〇〇〇円であると認められる。
3 期末棚卸高
(一) 被告の主張する期末棚卸高一七、七六九、七三〇円のうち旧東村山町南秋津中沢地域(以下「中沢地域」という。)の土地(評価額三、六七八、三六〇円―別表二番号11・12ニ)以上の土地の評価額一四、〇九一、三七〇円については弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第五八号証並びに弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。
(二) 被告は、中沢地域の土地の期末棚卸高を算出する根拠として、別表二番号11イ(以下「中沢地域A」ともいう。)及び番号12ロの土地(以下「中沢地域B」ともいう。)のうち係争年中新藤千恵外一三名に売却された土地(すなわち別表二番号11・12ハ)を控除した残存土地の坪数三〇六・五三坪に単価一二、〇〇〇円を乗じたと主張するもののようである。
しかしながら、新藤千恵、真島栄、広瀬裕ら三名に売却した土地はその所在地番に照らすと(前掲甲第九号証の一、同第一〇号証の一、同第三五号証の二参照)前記松村モヨ子から仕入れた土地の一部ではなく、中沢地域A一九〇・六二坪の一部に当たるものと推認できる。
(三) そうすると、中沢地域A、Bの期末棚卸高は次のとおり算出される。
<1> 中沢地域Aの評価額 三一七、五四一円
算式は次のとおりである。
{一九〇・六二坪-(六七・〇〇坪+五〇・〇〇坪+三六・三七坪)}×単価(一、六二四、九六〇円÷一九〇・六二坪)=三一七、五四一円
<2> 中沢地域Bの評価額 三、六五四、七二〇円
仕入坪数七六〇坪のうち、係争年中に売却された土地は岡部秀夫外九人分―仁木功に対する三五・二八坪分はすでに説示したとおり昭和四〇年分の売上げである。―四五五・四四坪を差引いた三〇四・五六坪が年末に在庫として残つていたと認めることができる。その棚卸評価額の算式は次のとおりである(単価は前記認定にかかる松村モヨ子からの仕入単価である。)。
三〇四・五六坪×単価一二、〇〇〇円=三、六五四、七二〇円
<3> 以上<1>と<2>を加算すると、三、九七二、二六一円となる。
三一七、五四一円+三、六五四、七二〇円=三、九七二、二六一円
右が中沢地域の期末棚卸高である。
(四) よつて昭和三九年末現在の期末棚卸高は、次の算式のとおり前記当事者間に争いのない分及び中沢地域の評価額の合計一八、〇六三、六三一円である。
一四、〇九一、三七〇円+三、九七二、二六一円=一八、〇六三、六三一円
4 以上のとおりであるから、昭和三九年分の売上原価は、次の算式のとおり前記1期首棚卸高に前記2仕入高を加算し、前記3期末棚卸高を控除することにより一一、七五九、二九九円が求められる。
一八、二〇二、九三〇円+一一、六二〇、〇〇〇円-一八、〇六三、六三一円=一一、七五九、二九九円
四 必要経費
必要経費の金額のうち、接待交際費の額を除くその他の経費の金額については当事者間に争いがない。
原告は、被告の主張する接待交際費の金額七五八、一三八円のほかに二、二七〇、〇〇〇円の接待交際費があると主張するのであるが、右主張は、交際費支出の時期、支出先、支出目的が明らかでなく事業との関連性も不明であつて、到底これを採用することはできない。
よつて、必要経費の金額は被告の主張するとおり六、八一七、三五一円と認めるべきである。
五 結論
原告の昭和三九年分の事業所得金額は、以上一ないし四において認定したところの各内訳項目を加減すると、一三、七四六、五六五円であると認められる。
(昭和三九年分の総所得金額)
前示認定にかかる事業所得の金額を当事者間に争いのない不動産所得及び給与所得の各金額に加算すると、原告の昭和三九年分の総所得金額は一五、七五〇、一九一円と認められる。
よつて、被告の本件更正における認定額一四、六七八、二八五円は右金額を下まわるから正当というべきである。
第三昭和四〇年分の所得金額
昭和四〇年分の所得のうち、不動産所得の金額については当事者間に争いがない。そこで以下被告主張にかかる事業所得の金額の当否につき検討する。
一 売上高
1 売上先(1)関八重子、(2)北林幸太郎、(3)石山羊司、(6)小沼治夫、(7)渡辺久幸、(8)篠木隆三、(9)丸善建設、(16)富所常好と原告との間の土地売買契約につき代金額及び右代金の収入すべき年分が被告主張のとおりであることは当事者間に争いがない。
2 そこで以下順次争いある売上高につき検討する。
(一) 売上先(4)山崎浩に対する売上高
証人小澤才介の証言により真正に成立したものと認められる乙第一三号証の一、二、同第一四号証及び証人小澤才介、同田中松次郎の各証言によると、原告は、殖産住宅相互株式会社との間に分譲地給付契約を締結していた山崎浩に対し昭和四〇年八月ころ被告主張の宅地を代金二、四二九、四〇〇円で売却し、夫坂田義一を介して右殖産住宅相互株式会社から右代金を取得し、同金額の売上を得たことが認められる。
もつとも証人山崎浩の証言により真正に成立したものと認められる甲第一九号証の一、二及び証人山崎浩、同坂田義一の各証言中には、原告主張のとおり右売買による約定金額が一、八六二、五四〇円であるとの記載及び供述部分があるが、前記乙第一三号証の一、二、同第一四号証は、証人小澤才介の証言によると、殖産住宅相互株式会社が業務遂行上作成した文書であり、作為のなされる余地のないものと認められるから、これらの文書に照らしいずれもたやすく措信しがたいといわねばならない。
他に前記認定を覆すに足る証拠はない。
(二) 同(5)山田実に対する売上高
証人田中松次郎の証言により真正に成立したものと認められる乙第一五号証の一ないし三、証人田中松次郎、同小澤才介、同遠藤七郎の各証言によると、原告は夫義一を介し昭和四〇年四月二日山田実、山田静男両名に対し被告主張の土地を代金五、九八五、〇〇〇円(坪当り六三、〇〇〇円)で売却し、同金額の売上げを得たことが認められる。
証人坂田義一の証言により真正に作成されたものと認められる甲第二〇号証には原告の主張にそう代金額の記載部分があるが、前記乙第一五号証の一ないし三及び証人田中松次郎の証言に照らしたやすく措信することができない。証人坂田義一の証言及び原告本人尋問の結果も前記認定を左右するに足りない。
(三) 同(10)岩渕文男に対する売上高
証人石川新の証言により真正に成立したものと認められる乙第四六号証、同第四七号証の一ないし三及び同証人の証言並びに弁論の全趣旨によると、原告は、昭和四〇年八月三〇日、鈴木勇を介して岩渕文男に対し被告主張の土地を代金一、〇一五、二九〇円(坪当り二九、〇〇〇円)で売却し、即日手附金として三〇〇、〇〇〇円、翌昭和四一年七月二五日ころ所有権移転登記手続とともに最終的な残代金の支払があり、合計一、〇一五、二九〇円を受領したことを認めることができる。
証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第二一号証の一、二及び同証人の証言中には原告主張のように、代金額八七五、二五〇円で売買がなされた旨の記載及び供述部分もあるけれども、前記乙第四六号証、同第四七号証の一ないし三及び証人石川新の証言に照らしたやすく措信することができない。
もつとも、原告の右代金一、〇一五、二九〇円については、右認定事実からすれば、前記第一の一の4記載のとおり、代金の完済を受け、所有権移転登記手続を履行した昭和四一年七月二五日ころにその収入すべき権利が確定したものというべきであるから、同金額の売上高は昭和四一年分の所得に帰属するものと解すべきである。してみれば、右売上高が昭和四〇年分に帰属するとの被告の主張は失当といわざるをえない。
(四) 同(11)服部昭吉に対する売上高
証人小澤邦重の証言により真正に成立したものと認められる乙第一六号証及び同証人の証言によると、原告は昭和四〇年八月ころ鈴木勇を仲介人として服部昭吉に対し被告主張の土地を代金一、四七〇、〇〇〇円(坪当り約三〇、〇〇〇円)で売却し、同金額の売上を得たことを認めることができる。
証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第二二号証及び同証人の証言中には原告の主張するとおり代金額一、二二八、〇〇〇円で売買取引がなされたとの記載ないし供述部分があるが、いずれも前記乙第一六号証及び証人小澤邦重の証言に照らしたやすく措信することができないし、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
(五) 同(12)浜勝子に対する売上高
原告が昭和四〇年九月ころ浜勝子に対し被告主張の土地を代金二、〇〇〇、〇〇〇円で売却したことは当事者間に争いがないところ、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第二三号証、証人小澤才介の証言により真正に成立したものと認められる乙第二九号証及び同証人の証言によると、右取引による代金については、内金五〇〇、〇〇〇円は契約締結と同時に、五〇〇、〇〇〇円は昭和四〇年一一月二八日、五〇〇、〇〇〇円は昭和四一年一月末日、五〇〇、〇〇〇円は同年四月末日所有権移転登記手続と同時にそれぞれ支払う約定であつたこと、そして、ほぼ右約定どおりに契約当事者間で履行せられたことが認められる。
そうすると、原告の右代金二、〇〇〇、〇〇〇円については、右認定事実からすれば、前記第一の一の4記載のとおり、代金の完済を受け、所有権移転登記手続を履行した昭和四一年四月末ごろにその収入すべき権利が確定したものというべきであるから、同金額の売上高は昭和四一年分の所得に帰属すべきものと解すべきである。してみれば、右売上高が昭和四〇年分に帰属するとの被告の主張は失当といわざるをえない。
(六) 同(13)三野栄治に対する売上高
証人田中松次郎の証言により真正に成立したものと認められる乙第一七号証、証人石川新の証言及び弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第四五号証並びに証人田中松次郎、同石川新の各証言によると、原告は昭和四〇年八月ころ仲介人鈴木勇を介して三野栄治に対し被告主張の土地を二回にわたり計六九坪(実測)を代金二、〇〇一、〇〇〇円(坪当り二九、〇〇〇円)で売却し、同金額の売上を得たことを認めることができる。
証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第二四号証の一、二及び同証人の証言中には原告の主張するように代金一、七二四、五〇〇円で取引がなされたとの記載及び供述部分があるけれども、前記乙第一七号証、同第四五号証、証人田中松次郎、同石川新の各証言に照らしてたやすく措信できない。
原告は、また乙第四五号証記載の契約金額は買主が東京都から融資を受けるために水増しをしたものであるというが、前記第一の一の3で説示したとおり、土地売買に際しての約定金額と東京都の融資額との間には何の関連性もないのであつて、原告の主張には合理性がないといわざるをえない。
なお、原告は、被告が右売上金額をいつたんは一、八八五、〇〇〇円と主張しながら、これを二、〇〇一、〇〇〇円に訂正することには異議があるというけれども、被告の右主張の訂正は自白の撤回には当たらないのみならず、前記認定事実のとおり、被告は真実の事実関係にそうように主張を訂正したにすぎないものと認められるから、原告の右主張は失当である。
(七) 同(14)神座康夫に対する売上高
証人小澤才介の証言により真正に成立したものと認められる乙第一号証、並びに弁論の全趣旨によれば、原告は昭和四〇年中に、仲介人深谷一雄を介して神座康夫に対し被告主張の土地を代金一、〇二五、六一五円(深谷一雄に対する仲介人手数料一二五、〇七五円を含む)で売却し、同金額の売上を得たことを認めることができ、右認定を覆すに足る証拠はない。
(八) 同(15)佐藤義雄に対する売上高
原告が昭和四〇年中に被告主張の土地を佐藤義雄に売却したことは当事者間に争いがないところ、後記のとおり同年中の取引である売上先(17)神岡定雄との取引については坪当り約二七、〇〇〇円であることが認められること、同じく売上先富所常好との取引についても坪当り約二七、〇〇〇円であることは当事者間に争いがないこと等に照らすと、弁論の全趣旨により右両名の取引物件と隣接することの明らかな本件土地については少くとも坪当り二五、〇〇〇円を下廻らない価額で取引されたものと認めるのが相当である。従つて、被告主張の売上高は相当として肯認することができる。
もつとも、証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第二六号証の一、二及び同証人の証言によると、価額九〇四、一二〇円(坪当り一八、〇〇〇円)で取引されたとの記載及び供述部分があるけれども、近隣土地と比較して坪当り七、〇〇〇円も廉価にて取引すべき特段の事情も見当らないことからすると、右はたやすく措信することができないといわざるをえない。
(九) 同(17)神岡定雄に対する売上高
証人田中松次郎の証言により真正に成立したものと認められる乙第一一号証、証人小澤邦重の証言により真正に成立したものと認められる乙第一九号証及び証人田中松次郎、同小澤邦重の各証言によると、原告は昭和三九年一〇月二二日仲介人鈴木勇を介して神岡定雄に対し被告主張の土地を少なくとも代金一、三〇〇、二七五円(坪当り約二七、〇〇〇円)で売却し、同年中に手附として一〇〇、〇〇〇円、翌昭和四〇年二月二日所有権移転登記手続と同時に残代金の支払を受けたことを認めることができる。
原告は、売買価額は八六八、五〇〇円であると主張し、証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第二八号証の一、二及び同証人の証言によると、右主張にそう記載及び供述部分があるけれども、前記乙第一一、一九号証、証人田中松次郎、同小澤邦重の各証言に照らしたやすく措信することができない。
そうすると、原告の右代金一、三〇〇、二七五円については、前記認定事実からすれば、前記第一の一の4記載のとおり、代金の完済を受け、所有権移転登記手続を履行した昭和四〇年二月二日にその収入すべき権利が確定したものというべきであるから、同金額の売上高は昭和四〇年分の所得に帰属すべきものと解せられる。してみれば、右売上高が昭和四〇年分に帰属するとした被告の主張は相当というべきである。
3 以上により、昭和四〇年分の売上高は、被告の主張する四二、四〇五、五二〇円から、前記のとおり昭和四一年分に帰属するものと解すべき売上先(10)岩渕文男に対する売上一、〇一五、二九〇円及び売上先(12)浜勝子に対する売上二、〇〇〇、〇〇〇円を控除した三九、三九〇、二三〇円となる。
二 受取仲介手数料
1 原告が青木勇外一八件合計三八九、七五〇円の仲介手数料を取得したことは当事者間に争いがない。
2 成立に争いのない乙第三四号証、証人当麻喜三郎の証言により真正に成立したものと認められる乙第二三号証並びに弁論の全趣旨によると、昭和四〇年三月九日原告は従業員当麻喜三郎を介して株式会社小沢商事から埼玉県川越市の土地譲渡取引に関し利益分配金の名目で手数料として五〇〇、〇〇〇円を受領したことを認めることができる。右認定に反する証人坂田義一の証言及び原告本人の供述は、前記乙第二三、三四号証に照らしてたやすく措信できないし、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
3 以上により受取仲介手数料は八八九、七五〇円と認められる。
三 売上原価
1 期首棚卸高
昭和四〇年の期首棚卸高についても、昭和三九年分の売上原価の項で述べたと同様の理由により、昭和三九年期末の棚卸資産中、仁木功に対する売上にかかる土地(東村山町南秋津中沢所在三五・二八坪)を、昭和四〇年分の売上高に加算しないことに伴い、同年分の売上原価の算出上、右土地を除外して計算することとする。従つて、昭和四〇年分の期首棚卸高は、前記認定した昭和三九年の期末棚卸高一八、〇六三、六三一円から、右土地の評価額四二三、三六〇円(三五・二八坪×一二、〇〇〇円=四二三、三六〇円)を控除した一七、六四〇、二七一円となる。
2 仕入高
久留米町南沢北原外四件の土地(別表三 番号11ないし15ロ)の仕入価額については当事者間に争いがない。
原告は、仕入先栗原松吉からの仕入高(別表三 番号16ロ)を争うのであるが、証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第三六号証の三によると、原告は栗原松吉から被告主張の土地を四、七〇〇、〇〇〇円(坪当り二〇、〇〇〇円)で買い入れたことが認められる。他に右認定を左右するに足る証拠はない。また、原告主張の造成費四一九、六〇〇円については、何故に右金額が仕入高に加算されるべきか明らかでないのみならず、右金額支払の事実も認められないから、右主張は採用しがたい。
そうすると、仕入高は四四、〇〇三、九〇五円となる。
3 期末棚卸高
(一) 被告の主張する期末棚卸高三三、二五九、三九五円のうち、中沢地域(旧東村山町南秋津中沢)の土地の評価額一、三一五、八〇〇円(別表三 番号8・9ニ)以外の土地の評価額(別表三 番号1ないし6、10、12ないし15)三一、九四三、五九五円については当事者間に争いがない。
(二) すでに説示したとおり、中沢地域の昭和三九年末現在(すなわち、昭和四〇年一月一日の期首現在)の評価額は、同地域Aについては三七・二五坪 三一七、五四一円及び同地域Bについては三〇四・五六坪 三、六五四、七二〇円から仁木功分三五・二八坪 四二三、三六〇円を控除した二六九・二八坪 三、二三一、三六〇円である。
ところで、中沢地域の土地のうち被告の主張する売上先神座康夫外三件(別表三 番号8・9ハ欄)に対する売却土地は、各売買契約書の土地地番(証人坂田義一の証言により真正に成立したと認められる甲第二五ないし第二八号証の各一及び証人小澤才介の証言により真正に成立したと認められる乙第二八号証参照)によれば、いずれも昭和三九年中に松村モヨ子から仕入れた土地(すなわち、中沢地域B)の一部であることを認めることができる。
そうすると、
<1> 中沢地域Aについては前記三七・二五坪 三一七、五四一円が期末評価額としてそのまま残存し、
<2> 中沢地域Bについては次の算式のとおり昭和四〇年中の売上を除外した分、八八一、八八〇円が期末の評価額である。{二六九・二八―(五〇・〇三+五〇・二四+四七・二七+四八・二五)}坪×一二、〇〇〇円=八八一、八八〇円
<3> よつて中沢地域の期末の評価額は右<1>と<2>の合計額一、一九九、四二一円である。
(三) 被告は、原告が栗原松吉から仕入れた土地(坪単価二〇、〇〇〇円)は岩渕文男外三名に売却されたものとして期末の評価額はゼロと主張する(別表三 番号16ニ)が、すでに述べたとおり、売上先岩渕文男、同浜勝子についてはいずれも昭和四一年分の売上に属すべきものであるから、次の算式どおり、二、三六〇、四〇〇円の期末評価額が計上されなければならない。
(三五・〇一+八三・〇一)坪×二〇、〇〇〇円=二、三六〇、四〇〇円
(四) よつて、昭和四〇年末現在の期末棚卸高は次の算式どおり前記(一)ないし(三)の合計額三五、九二六、七七六円である。
三一、九四三、五九五+一、一九九、四二一円+二、三六〇、四〇〇円=三五、五〇三、四一六円
4 以上のとおりであるから、昭和四〇年分の売上原価は、次の算式どおり、前記1期首棚卸高に前記2仕入高を加算し前記3期末棚卸高を控除することにより二六、一四〇、七六〇円が求められる。
一七、六四〇、二七一円+四四、〇〇三、九〇五円-三五、五〇三、四一六=二六、一四〇、七六〇円
四 必要経費及び雑収入
被告主張の必要経費及び雑収入の各金額は原告において明らかにこれを争わないから自白したものと認められる。
五 結論
原告の昭和四〇年分の事業所得金額は、以上一ないし四において認定したところの各内訳項目を加減することにより六、〇〇六、四二九円が求められる。
(昭和四〇年分の総所得金額)
前示認定にかかる事業所得の金額を当事者間に争いのない不動産所得の金額に加算すると、原告の昭和四〇年分の総所得金額は七、二一二、五七六円と認められる。
よつて、被告の本件更正における認定額六、四九三、七八一円は右金額を下まわるから正当というべきである。
第四加算税賦課決定の当否
一 原告の本件各係争年分における総所得金額は前記認定のとおりであり、原告はこれを過少に申告したものであるところ、被告が別表四ないし六において主張する重加算税計算の対象となるべき所得金額のうち後記以外の土地の売買等による所得は、それぞれ右各表において挙示した各証拠並びに弁論の全趣旨によれば、原告において故意にこれを隠ぺい又は仮装し、その隠ぺい又は仮装したところに基づいて各年分の確定申告を提出したものと推認することができる。
1 別表四ないし六において被告主張の昭和三八年分売上先竹村竹一(売上額九〇〇、〇〇〇円)、昭和三九年分売上先仁木功(売上額八八二、〇〇〇円)、昭和四〇年分売上先岩渕文男(売上額一、〇一五、二九〇円)、同浜勝子(同二、〇〇〇、〇〇〇円)については、すでに説示したように、右各売上額はいずれも翌年分の売上に帰属すべきものであるから、これらを当該年分の売上に属するものとして原告においてその所得につき申告すべきであるとした被告の主張は失当というべきである。従つて右各売上先について被告の主張にかかる金額と原告の当初申告額との差額に関してはこれを各重加算税計算の対象となるべき所得金額から控除されなければならない。
2 昭和四〇年分売上先神座康夫については、証人坂田義一の証言により真正に成立したものと認められる甲第三五号証の三(売上明細帳)には同売上先に対する売上の記帳のないことが認められるけれども前掲乙第二八号証及び、証人小澤才介の証言によると、原告は右取引について売上額を九〇〇、五四〇円と主張していることも認められるのであつて、取引額の一部について故意による隠ぺいがあつたということはできても、取引額全部について故意による隠ぺいがあつたと認めるのは速断のそしりを免れないといわざるをえない。してみれば、右売上先に対する売上金額と原告の主張額との差額は一二五、〇七五円であり、右差額以上の金額は被告主張の昭和四〇年分重加算税計算の対象となるべき所得金額から控除されなければならない。
二 原告は、本件各係争年分の取引はすべて夫坂田義一に一任してあつたこと、さらに右義一は竹井京に経理や納税申告も全部委せてあつたことを理由に、土地の売上金額等を過少に計上し、又は全く計上しなかつたことについて故意はなかつたと主張するのであるが、証人坂田義一の証言によれば、原告は夫義一とともに本件各取引に関与し、納税事務にも従事していたことが認められるだけでなく、前掲乙第一五号証の一によると昭和四〇年分売上先山田実に対し売買取引の単価は原告の主張額どおりにしてほしいと頼んだり、或いはまた前掲乙第四六号証によれば、同年分売上先岩渕文男に対して原告主張の売買金額どおりに取引がなされた旨証明してほしいと依頼していること(甲第二一号証の二参照)が認められるのであつて、このような点からすれば、原告の主張は到底支持しがたいといわねばならない。
三 以上によれば、各係争年分についての過少申告加算税賦課決定はもとより、重加算税賦課決定についても何らの瑕疵もないといわなければならない(もつとも、すでに述べたところにより、被告主張にかかる各係争年分における重加算税計算の対象となるべき所得金額から被告において誤つて加算した前記各金額を控除すべきことはいうまでもないが、これらを控除したとしても、なお、本件各重加算税賦課決定がその加算税計算の対象となるべきものとした所得金額を遙かに上廻ることは計数上明らかであるから、同各決定が適法であることには変りはない。)。
第五結語
以上の次第で、本件各更正及び本件各賦課決定はいずれも適法であるから、これらの取消を求める本訴請求はいずれも理由がなく棄却されるべきである。よつて訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 山下薫 佐藤久夫 高橋利文)
(別表一~六 省略)